憲法と戦争
湾岸戦争でイラクがクウェートを侵略し、クウェートからイラクを追い出そうとする国連安保理の決議が大多数で通った時に、日本は自衛隊を出さず、そのかわりに130億ドルを拠出しましたが、「日本はカネだけで血を流さない」と、世界から批判を浴びました。戦争終結後、クウェート政府が世界の協力国の名前を読み上げて謝意を示した時、そこに日本の名前は入っていませんでした。それまでは国民は大多数が護憲でしたが、この時を境に改憲派が多くなってきたように思います。
日本国憲法はアメリカ占領軍のマッカーサーが作ったものです。第9条は、占領軍である米国の「日本を強くしたくない」という意図から、完全な非武装を前提としています。でも、日本は「天皇制の護持」のために(天皇を戦争犯罪人にしないように)憲法9条を受け入れました。
憲法を発布したときの首相である吉田茂は、戦後の経済復興を最優先とし、日米安保に依存した軽武装の路線を認めました。鳩山一郎や岸信介は自主憲法制定、対米自立を主張し、吉田茂を追放しました。
1955年に左右社会党が一緒になり、社会党の脅威に対抗するため、自由党と民主党が一緒になって自由民主党ができました(55年体制)。この時、綱領で憲法改正を謳いました。それ以来、自民党は憲法改正のために生まれたと言われてます。中曽根元総理は軍隊のない国なんてやっていけないと言いました。
憲法9条第1項に「国権の発動たる戦争を放棄する」、第2項に「国の交戦権は、これを認めない」・・・冷戦時代は、日本人の多くが米ソの大国同士の争いに巻き込まれるのはまっぴらだと思っていましたから都合の良い憲法でした。ところが、冷戦が終わり、日米の経済摩擦が起こり、米国から非難され、日本の自立意識が高まりました。1990年に湾岸戦争の時にも、クウェートからは感謝されず、米国からも「日本人は血を流すのは嫌なのか。みんなが血を流しているときに、カネで済ます気なのか」と言われ、初めて日本の中で国際貢献という概念が出てきました。宮沢内閣のときにPKO法案(国際平和協力法)が可決され、国連が行う人道的な国際救援活動には自衛隊を出そうという流れになりました。次に、1994年に北朝鮮が核兵器を開発しているということが発覚し、1995年には台湾独立の空気が高まり、中国は軍事演習と称して、台湾沿岸にミサイルを撃ちこみ、緊張が高まりました。この朝鮮危機と台湾危機があり、日本も戦闘に巻き込まれることがあるかもしれない、独自に軍隊を持つべきだと、憲法改正の声が高まってきました。
そして、2001年9月11日の米国を襲った同時多発テロ。テロを指揮したと思われるアルカイダの指導者ビンラディンをかくまうイスラム原理主義タリバンを掃討するため、アフガニスタンを攻撃(アフガン戦争)。これまでは国対国の戦争でしたが、今や、どこでやられるか分からなくなりました。迎撃のしようがない戦争。日本はテロ特措法を作って、イージス艦を出しました。さらに、2003年にはイラク戦争が始まりました。アフガン戦争での自衛隊インド洋派遣、イラクへの自衛隊派遣は、いずれも特措法によるものです。特措法を作るということは解釈改憲をしているということで、やはりきちんと憲法を改正すべきだという意見が出てきました。
改憲か護憲かという世論調査では、改憲に一番反対の朝日新聞の調査で「改憲必要」という声が58%と、各紙の中で一番多かったので驚きました。しかし、同調査で興味深かったのは「改憲は必要でも、憲法9条を変えるのは反対」という意見が多かった点です。
私は、改憲に賛成ですが、あくまで自衛のための応戦までにとどめたいと思ってます。自衛隊は「専守防衛」に徹するということです。したがって、「国連安保理の決議が行われた場合、日本は国連の多国籍軍に参加することができる」とし、二度と戦争をしないように、慎重にいくつもの条件をつけて、歯止めをかけるべきだと思ってます。
当ブログ「核不要論」にも書きましたように、日本で核武装の論議が解禁されたこと自体は、日本の核武装を恐れる中国などに外交カードになりますが、現実に日本が独自に核兵器を持つことは政治的・外交的・経済的デメリットが多過ぎます。アルカイダを先制核攻撃で潰すと言っても、どこに向けて発射すれば良いのでしょう。まして、日本のように国土が狭く人口が密集している国は、核抑止力は薄いと思います。
中国の外相がヒトラーに例えて靖国参拝を批判したり、ロシア外務省の情報局長がプーチン大統領の訪日を前にロシア通信とのインタビューに応じ、北方領土問題を牽制するかのように「日本が過去の侵略を認めることが現実的な問題だ。中韓両国は日本指導部の公式謝罪を関係発展の条件とみなしている」と述べたり、仰天発言が多いですね。特に、ロシアにそんなことを言われたくないですよね。このように、日本は今もなお、中国やロシア、韓国、北朝鮮、米国(民主党議員など)から言いたい放題のことを言われて悔しい思いをしてます。領土問題でも歯がゆい思いばかりしています。しかし、そのようなことを言ってる国々はあまりにも好戦的なため、世界から最も嫌われている国々です。一方、日本は欧米の調査結果にも出ていますように、世界で最も信用されている国です。それは核兵器を持たず、侵略を絶対しないということにあると思います。世界一の軍事大国になっても米国のようにテロでやられ、いつもいつまでも戦争に明け暮れていなくてはならない。
また、米国の核の傘が今後も末永く存在するとしたら、日本はその下にいた方が良いのですが、この先その核の傘が失われる懸念があるわけです。しかし、対米従属できなくなった後に対する備えとして核を保有するとか軍事拡大いうのも間違っていると思います。もしかしたら、米国は日本を東アジアのイスラエルにしようとする時がくるかもしれないと考えるからです。中国が台湾に何らかの行動を起こすのは時間の問題です。そのあとは米軍基地の無くなった沖縄が心配です。一昨年、中国の国際問題専門誌・世界知識は、沖縄の日本帰属をめぐる歴史的経緯を紹介した専門家の論文を掲載。この中で、「戦後の日本による米国からの琉球接収は国際法上の根拠を欠き、その地位は未確定のままだ」と主張しました。第二次大戦後に他国へ何度となく軍事侵攻し、日本には核ミサイルの照準を合わせ、領海を侵犯してガス田を盗掘し尖閣諸島の侵略・・・それでも米国に中国を止める余力はありません。チベットも東トルキスタンも内モンゴルも中国のやりたい放題。でも、余力は無いけど米国は中国が世界の覇権を握るのは望んでいません。そこで、東アジアのことを日本に任せるかもしれません。その手に乗ってはイスラエルの悲劇と同じ目に遭うだけです。日本は同盟国の米国にも気をつけなければならないと思います。
最後に、日本に集団的自衛権が認められると、日本と同盟関係にある米国が攻撃された時に、日本が直接攻撃されていなくても反撃することになります。例えば、 「北朝鮮からミサイルが米国に向かって発射されたときに、集団的自衛権が行使できない日本は迎撃してはいけない。これでいいのか」と言われたら、どうでしょう? 迎撃ミサイルで撃ち落とした方が良いと答えるでしょうか? 北朝鮮からのミサイルが飛び立つ瞬間、できればその気配の段階で敵の動きを察知しなくては、成層圏のはるか彼方を飛んで米国に向かうミサイルを、日本上空で打ち落とせるものではないそうです。敵陣を攻撃するために、相手に気がつかれないF22ステルス戦闘機などで敵陣を攻撃できるようにしたいということは、北朝鮮に米国を攻撃する気配を感じた段階で日本が先制攻撃しないと間に合わないということです。したがって、集団的自衛権を認めることは先制攻撃をすることも想定しなくてはいけないことになりますね。すると、自衛ではなくなってしまいます。


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